🟦 5-1. 購入申し込みフェーズ

──意思決定と最初の一歩

物件を「買うかどうか」を決めるこのフェーズでは、情報収集・問い合わせ・条件交渉を経て、購入申し込み書を提出するまでの工程を扱います。

ここでの判断が、その後の流れを大きく左右します。


購入申し込みフェーズの概要

このフェーズでは以下の3ステップで構成されます。

⚪︎ステップ概要

Noステップ名概要
1📞 問い合わせ・交渉物件に関する懸念を解消し、価格や条件交渉を行う
2📝 購入申し込み申込書を提出して交渉権を得る
3📬 申し込みの結果確認申込結果と手付金・日程調整などの案内を受ける

⚪︎スケジュール感

Noステップ名1週目2週目3週目4週目
1📞 問い合わせ・交渉←ーーーー→
2📝 購入申し込み▲申込
3📬 申し込みの結果確認
 ←ーー→

各ステップの説明

📞 ステップ1:問い合わせ・交渉 

購入を検討している物件について、不動産会社に問い合わせを行い、不明点の解消やリスクの確認を進めるステップです。 

問い合わせる内容については、前章(4-4.問い合わせ準備)で詳しく紹介しています。 

物件に対して懸念がなくなったり、妥協できるポイントが見つかれば、価格交渉や契約条件の相談に進みます。
また、可能であれば現地見学をして建物の状態や周辺環境を確認するのが理想です。 

🧭 私の場合(現地非訪問) 

私は以下の理由から、現地見学を省略しています: 

  • オーナーチェンジ物件のため内覧不可である  
  • 遠方に居住しており、移動コストが高い
  • 信頼のおける不動産会社に問い合わせをしている 

その代わり、GoogleストリートビューやEarthを活用して、建物外観や周辺環境を事前にチェックしています。

📝 ステップ2:購入申し込み 

購入の意思が固まったら、売主に対して申込書を提出し、価格や契約条件を確定させるステップです。一般的には申し込み用紙に署名・捺印して、不動産会社を通じて提出します。 

申込は早い者勝ちが基本ルール。人気物件では、申込順で交渉権が与えられるケースがほとんどです。ただし、ローン審査が難航していると、後から申し込んだ人に順番が回ってくることもあるので、「ダメ元でも申し込んでみる」戦略は有効です。 
そのため、多少の懸念点があっても、まずは申し込みを優先するケースがあります。 

私自身、過去にいくつかのリスクを抱えた物件の購入申し込みを検討したことがありました。結局申し込みに至りませんでしたが、「特記事項」として条件を明記することで、リスク回避につなげることができます。 

もちろん、すべての物件にこうした条件を付けるべきとは限りません。過度な要求は売主に敬遠されるリスクもあるため、特記事項の設定は必ず仲介担当者と相談して慎重に行うことをおすすめします。 

以下にリスクの例とその対応方法について説明します。

  • ⏰ 決済日の遅延 
  • 🧰 入居者による設備不良の申告 

⏰「決済日の遅延」への対策 

■ 背景:なぜ起きるのか? 

申込時点では「◯月◯日決済予定です」と説明されていたのに、契約段階になると重要事項説明書に記載された日付がズレている──

実際、私が過去に経験したケースでは、申込時の約束が守られず、売主側の都合で決済・引渡が遅延。想定していた家賃収入が数万円減る結果となりました。 

なぜこんなことが起きるのかというと、売買契約書と重要事項説明書に記載された日付が法的に優先されるからです。申込時のメールや会話は、証拠としては弱いのが現実です。 

■ 対策:購入申込書に「決済期限の厳守」を明記する 

特記事項として、以下のような文言を記載します: 

本申込は、以下の条件を前提とする。 

  • 売買契約書に記載される決済日を「◯年◯月◯日」とし、これを超えて延長されないことを条件とする。 
  • やむを得ない理由で遅延する場合は、1日あたり◯円の遅延補償を支払うこととする。 
  • この条件が満たされない場合、本申込は無効とすることがある。 

※ 実際にこの内容を通せるかどうかは、売主の意向や仲介会社との関係次第です。交渉の余地があります。 

■ 現実的な落とし所 

  • 「決済予定日+7日以内であれば許容する」 
  • 「遅延が発生した場合、家賃相当分を日割りで補償」 

さらに、ステップ1での交渉時点で「売出価格からの値下げ」が実現している場合には、多少の遅延は目をつぶることもあります。 

例えば、希望価格での取得ができた代わりに「売主のスケジュールに合わせる」といった柔軟な姿勢を見せることで、交渉がスムーズになることもあるためです。 

■ まとめ 

項目内容
問題の本質申込時と契約時の決済日にズレがあり、損失が発生した
想定される損害決済・引渡の遅延による賃料収入の減少
予防策購入申込書に「決済期限厳守」の条件を明記
書き方の例「決済日遅延時は補償」「期日超過なら申込無効」など
例外判断値下げ交渉が通った場合は、多少の遅延を許容することもある

🧰「入居者による設備不良の申告」への対策 

オーナーチェンジ物件では、入居者が既に住んでいる状態で引き継ぐため、「設備に不具合がある」という申告を受けているケースもあります。

私が経験したケースでは、入居者が精神的な疾患を抱えており、実際には存在しない不具合を訴えていたとのこと。管理会社が現地確認をした結果、「問題なし」とされたのですが、こうした事例では、引渡後にトラブルが再燃することもあります。 

■ 条件として明記すべきポイント 

このようなリスクに備え、申込時に以下のような文言を入れておくと安心です。 

  • 強めのトーン(売主の責任を明確化) 
    本物件に関して、現賃借人からの設備不具合等の申告があるため、売主および管理会社において引渡し前に現地確認を行い、実際に不具合が認められた場合は、売主負担にて原状回復・修理を完了することを条件とする。 
    また、引渡し後に発覚した当該不具合についても、決済前に買主より指摘済みの場合は、売主の契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の対象とする。 
  • 控えめのトーン(協調型) 
    現入居者による設備不具合の申告について、決済前に確認のうえ、実際に不具合があれば売主または管理会社にて対処することを希望します。 
    本件についての対応方針は、契約前に書面で確認のうえ合意させていただきたいと考えています。 

■ 補足:法的背景(契約不適合責任) 

実際に不具合が存在し、かつ売主が引渡前にそれを把握していた場合は、民法上の「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を問うことができます。 
ただし、オーナーチェンジ物件は「現況引渡し」「室内未確認」が前提となることも多く、買主側が泣き寝入りになる例もあるため、事前に条件化しておくことが極めて重要です。 

📬 ステップ3:申し込みの結果確認 

購入申し込みが受け付けられると、不動産会社からその旨の連絡があります。申し込みが受領された場合は、次のような内容が案内されるのが一般的です: 

  • 手付金の金額
  • 手付金の支払い時期
  • 重要事項説明の日程調整 

これらの情報をもとに、契約の準備を進めていくことになります。 

ただし、売主側の事情によって、申し込み結果の連絡に時間がかかることもあります。 
ステップ1での問い合わせ時に、おおよそのスケジュール感は不動産会社から伝えられることが多いですが、それでも数日以上連絡がない場合は、自ら状況を確認する姿勢も大切です。 

申し込みはスタート地点に過ぎません。スムーズに契約に進めるよう、進捗確認やリマインドのひと手間を惜しまないことが、トラブル回避につながります。 


✅ まとめ:このフェーズのチェックポイント

  • ❓ 情報の不明点は問い合わせて解消
  • 📝 申し込みはスピードが命。迷ったら仮でも出す
  • 📄 特記事項はリスクヘッジの武器になる
  • 📬 進捗の確認は自ら能動的に

次の記事では、「契約フェーズ」で必要な書類や注意点、決済準備について解説します。


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