あれは、僕がまだ幼稚園児だった頃の大晦日の出来事だ。
親せきが実家に集まり、大人たちが酒を飲んで談笑している中、僕は一人コタツに入ってテレビを眺めながら、なんとなくのんびり過ごしていた。
僕は、そのとき流れていた天気予報に目を奪われた。
「日本で最も早く初日の出が見られるのは、千葉県の犬吠埼です」
おお、これはいい情報を手に入れたぞ──
小さな頭に「人より先に知ったこと」が嬉しくて、僕はまっすぐ大人達のところへ駆け寄った。
「ねえ、初日の出がいちばん早いのは千葉の犬吠埼なんだって!」
すると、叔父は笑いながら首を振った。
「何を言ってるんだ。日本で一番東にあるのは北海道なんだから、北海道が一番早いに決まってるじゃないか」
叔父さんの顔には、鼻で笑うような、どこか馬鹿にしたような半笑いが浮かんでいた。
周囲の大人たちも「はいはい」といった感じで流してしまい、僕の言葉はそこで止まってしまった。
あの空気を、今でも忘れられない。
たしかに、地図を見れば北海道の方が東にある。
でも、僕は「ちがうんだけどな…」という確信があった。
それでも言い返せなかった。
地球の地軸が傾いていて、日の出の時刻は単純な東西では決まらない——
そんな理屈を、当時の僕には到底うまく説明できなかった。
ただ、胸のなかでモヤモヤしながら、黙って引き下がるしかなかった。
🎈伝える言葉がないと、正しさは意味を持たない
今思えば、あのときの僕は、人生で初めて「伝えられなさ」による無力感を味わったのかもしれない。
「知っている」だけでは、人は動かない。
「正しい」だけでは、相手は納得してくれない。
伝え方。言葉の選び方。相手との関係性。
真顔で話す子どもに、真剣に耳を傾けてくれる大人がどれだけいるか。
あのとき僕は、それを知らなかった。
いや、知らなかったんじゃない。ただ、手にしていなかった。
だからこそ、くやしかった。
📚小さな「初挫折」と、僕の現在地
それから何十年も経ったけれど──
残念ながら、僕は特に劇的に成長したわけでもなく、今でも会話は得意じゃない。
自分の考えを、その場でうまく言葉にするのが苦手だし、ましてやユーモアで人を笑わせるなんて、とてもできない。
言いたいことがあるのに、言葉に詰まり、会話の流れに乗れずに取り残されることもある。
でも、最近ようやく、そんな自分に合った「伝え方」を見つけた気がしている。
それが、ブログです。
✍️「言葉にできない思い」を、文字にして届けたい
このブログを始めてから、僕はようやく自分の考えを整理しながら、落ち着いて言葉にできるようになった。
誰にも遮られず、タイミングを気にせず、自分のペースで伝えたいことを書ける。
それが、思いのほか心地よくて、今ではとても楽しいと感じている。
まだ始めたばかりで、読者も少ないし、リアクションもまばらだけど──
インターネットという広い世界に、自分の気持ちをそっと置いていけるのが嬉しい。
いつかこの文章が、誰かの目に触れて、
「ああ、この人の気持ち、ちょっとわかるかも」
そう思ってもらえる日が来たら、きっとそれだけで報われる気がする。
たくさん話せなくても、上手に笑わせられなくても。
僕のことを少しずつでも知ってくれて、価値観に耳を傾けてくれる人が増えてくれたらいいなと思う。
☀️それでも、朝日はのぼる
ちなみに、「日本で一番早く初日の出が見られる場所」は、実際にはいくつか条件がある。
- 🌴 南鳥島:最東端だけど一般人は立ち入り不可
- 🗾 北海道・納沙布岬:本土の東端だが、地形の関係で冬至前後は遅くなる年もある
- 🌊 千葉・犬吠埼:平地で観測可能な中では、冬の初日の出が最も早いことが多い
あのとき、テレビが伝えていたのは、ちゃんとした気象観測に基づいた情報だった。
そんな話も、大人になった今なら、落ち着いて、誰かに説明できる。
でも、だからこそ忘れたくない。
あのときの僕の、届かなかった言葉と、飲み込んだ気持ち。
「正しいことを知っていても、伝えられなければ意味がない」
──その切なさを、今も僕は覚えている。
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