🏚️ 「建て替えしやすくなる法改正」ってホント?札幌の築古区分オーナーが感じた限界
2025年5月、区分所有法が改正され、マンションの建て替えや敷地売却に必要な所有者の賛成要件が緩和されました。
これまで「全員一致」が必要だったのが、原則「5分の4」、場合によっては「4分の3」の賛成でOKに。
ニュースでは「空き家・老朽マンション対策の切り札」とも報じられていましたが──
札幌で築古区分マンションを14室保有し、すべてを賃貸中の僕からすると、
「ルールが変わっただけで、現場は何も変わらない」
というのが正直な感想です。
❄️ 札幌での現実:「建て替えたくてもできない」理由
1. 安すぎる物件 × 高すぎる建て替えコスト
札幌には、300〜500万円程度で買える築40〜50年の区分マンションがゴロゴロあります。
でも、建て替えには1室あたり2000万円〜4000万円ほどの負担がかかる。
買値の数倍を出さなければならないのに、
「建て替えれば新築になるんだから出せるでしょ?」
とは到底言えません。
2. 入居者を退去させられない
所有している部屋はすべて賃貸中。
つまり建て替えのためには借主に退去してもらわないと始まらない。
でも、今回の法改正では賃貸借契約にはまったく触れていません。
建て替えを理由に一方的に契約を解除することはできず、退去交渉・補償・訴訟リスクを大家が個別に背負うことになります。
「建て替えは可能になった。でもそのためには、自分で入居者を説得し、補償して、時には裁判までする覚悟がいる」
これ、誰がやるんでしょうか?
3. 管理組合が実働していないことも多い
小規模マンションでは、理事会が機能していなかったり、そもそも年1回の総会すら開けていないことも。
そんな中で「じゃあ再建しましょう!」と声をあげても、動く人がいない。
特に高齢化が進んでいるマンションでは、実行に移す担い手が不足しているのが現実です。
🔍 建て替え決議後の「入居者退去」の壁
ここ、誤解されがちですがとても重要です。
- 今回の法改正は所有者の議決権に関する話であって、
- 賃貸借契約の解除・退去に関するルールは一切変わっていません。
つまり、
「建て替えが決まったから、借主さん出てってください」は通用しない。
借地借家法により、借主には強い権利があります。
大家が退去を求めるには「正当事由」と「補償」が必要で、合意が得られなければ訴訟して明け渡し請求をしなければなりません。
⚖️「大家の権利」にも光が当たる日は来るのか?
現在、国の法制審議会では、ようやく以下のような制度の議論が始まりました:
- 建て替え決議に基づいて賃貸借契約を終了できる「終了請求制度」の創設
- 借主への立退き補償制度
- 賃貸人と借主間の調整手続きの簡素化
でもこれらはまだ国会で審議すらされておらず、法案化・成立には至っていません。
借主保護が強すぎる日本の制度では、大家の立場は依然として“損する側”。
ルールを守って賃貸しているのに、いざという時は退去させることもできず、建て替えの足かせになる。
「建て替えしやすくする」と言いながら、
退去させられない、補償は大家が負担、裁判で争うしかない──
これじゃあ、全然促進なんてできない。
🗺️ 僕が選ぶ現実的な戦略
建て替え議論に夢を見るのではなく、現実的に“出口”を描ける物件を持つこと。
- 修繕体制がしっかりしていて長期保有に耐えるか?
- 退去後にリフォーム・再賃貸・売却のどれが取れるか?
- 再建の芽がある場合、投資家が高く買ってくれる出口があるか?
こうした視点で築古区分を保有・入れ替えしながら、
「再建を待つ」のではなく「持ち続けられる戦略」をとっています。
✍️ まとめ:ルールだけ変えても、建物は動かない
今回の法改正は一歩前進かもしれない。
でも、現場で大家として見えているのは、まだまだ動かないマンションのリアルです。
築古区分を持つということは、再建の夢を追うより、
「どうやって無理なく持ち続けるか」「どうやって出口を作るか」を考えること。
それが、札幌の現場で得た僕の答えです。